約 431,417 件
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1970.html
279 :名無しさん@お腹いっぱい。:2016/06/06(月) 21 25 37.52 ID E8IFGM4p0 「おい 桐乃」 「ん?」 「今日大学来たときのあれ なんだ」 「は?何のこと?」 「正門前にいたろお前 一緒に居たの誰だ」 「あー あーあれね」 「お前が話してたの あれ誰だ」 「あの人ね あー あー 知らない人」 「知らない人?」 「そ 初対面のひと」 「なんでお前はうちの大学で はじめて会う男と話してるんだ」 「なに?いきなり絡んできてその態度って?ウザいんですけど」 「俺は真剣なだけだ」 「だからー ただのナンパだって 声掛けられたの」 「そうなのか」 「そうなの まあ適当にあしらっておいたけどね」 「お前はいつもあんななのか?」 「はあ?」 「あんな楽しそうにナンパしてくる男の相手するのか?」 「楽しくなんか…別にね 塩対応してもいいけど可哀想じゃん?」 「可哀想?」 「そ 勇気出して声掛けてきてんだよ きっと ちょっとだけでも話してあげてもいいじゃん」 「本当か?」 「あーもー!アンタしつこい!ウザい!なんなの?!関係無いじゃん!!」 「…関係ないってどういうことだ」 「アタシに用がある人間にアタシがどんな風にしようと勝手でしょ!何か問題ある!?」 「…」 「そもそもナンパなんて日常だし 街歩いてたらされて当たり前だし 対応とか慣れてるし」 「…」 「まあアタシくらいの美少女だもん 男どもが放っておくわけないよねー?」 「…」 「なに?その顔?あ ひょっとして嫉妬してる?えー なにそれー キモーイ」 「…」 「"俺の女に手を出すな!"ってヤツ?うわー」 「…桐乃」 「そういうのウザいから やめてよね」 「…」 「心配してるのかもしれないけど おせっかいだから」 「桐乃」 「なに?あんなの アタシ一人でも大丈夫だから」 「桐乃」 「だから放っておいて!」 「桐乃」 「ああもう!!あっち行って!!」 「桐乃!!!!!」 「ひぅっ!?」 「…」 「…」 「あ…いや」 「な…に…そんな…」 「…」 「さ サイテー…女の子…怖がらせるとか…」 「…スマン 悪かった 感情的になっちまって」 「…出てってよ…」 「出て行かない まだ話は終わってない」 「これ以上なに…」 「お前が本当のことを言うまで俺は動かない」 「…」 「あのあとお前と会ったとき 明らかに様子おかしかったよな?」 「そんなこと…」 「あの男のせいか?」 「…」 「そうなんだな?」 「ちが…」 「…」 「…」 「桐乃」 「…うん」 「…そうか」 「…」 「聞かせてくれるか?」 「…あのね」 「…」 「…ナンパされるの 慣れてるってホントなんだ」 「ああ」 「でも…そういう時って友達がいるから なんとかなるんだけど」 「…」 「ひとりの時は 怖いの」 「…」 「みんなと一緒のときみたく 適当にあしらったり無視したり したいんだけど」 「…」 「怒らせちゃって なにか なにかされたらって思うと」 「…」 「笑って 話なんかして そうすれば大丈夫かなって」 「そうか…」 「凄く 怖くて だから 無理やり笑って」 「桐乃…わかった 言ってくれてうれしいよ その…怖かったんだな」 「…うん」 「なんか 悪い 嫌な気分にさせちまってすまない」 「ううん」 「いや さっき話しかけたときイライラしてた 強い語調になってスマン」 「…ちょっとこわかった」 「ほんっと!ゴメン!」 「やっぱ嫉妬してたんだ…」 「や まあ 嫉妬 ん…正直なところ あのとき男と二人でいたって時点でイラっとした」 「そっか 嫉妬か ふーん んふふ」 「なんで嬉しそうなんだよ」 「なんでもなーい」 「…なあ桐乃」 「わぁっ?!」 「どうだ?」 「ななな…いきなり抱きついてきて何…」 「優しくしてるつもりだけど…痛くないか?」 「…ちょっと痛い」 「こんなに細いもんな お前今日さ ナンパされたとき一人でなんとかしようって思ったんじゃないか?」 「…そりゃ アタシのことだし」 「お前は抱きしめられるだけでも簡単に傷つけてしまうくらい繊細なんだ そんなか弱い存在なんだ」 「ん…」 「弱さを見せないのは 桐乃 お前の良いところだ でも弱さを認める強さってのもある」 「認める…」 「自分ではどうしようもないこと 何もできないこと あるだろ?」 「うん」 「お前の悪いところだ 何でも自分でやろうとして 全部抱え込んでクラッシュしちまう ずっと前から ずっとそうだ」 「…」 「痛いなら痛いって 怖いって言ってくれよ」 「うん わかった…」 「いつでもお前のとこに行ってやる」 「ほんと?」 「ああ お前がピンチのとき俺が居なかったことあるか?」 「…ない」 「安心しろ なにかあったときはこの体温を思い出してくれ 俺はいつもお前のそばにいる」 「…スタンド…?」 「4部のアニメは良い出来だよな…って いい雰囲気が台無しだよ…」 「いいの アタシ達にそういうの似合わないの そう思わない?」 「まあ かもな」 「くすっ ふふ」 「はは」 「さて じゃあ行きますか」 「え?」 「ナンパ野郎に嫌な思いさせられたのよ 忘れるために何か美味しいものでも食べに行こうよ」 「え…今月キツいんだけど…」 「…なんか言った?」 「そんな目で見るなよ怖いよ」 「こないだ沙織に教えてもらった中華のお店があるんだ!行ってみよ!!」 「待て待てまて!沙織!?あいつがオススメする店の料理って幾らすんの?!」 「いいじゃんいいじゃん アンタこないだカード作ったんでしょ?それで」 「やめろその発想!カードは魔法のアイテムじゃないんだぞ!」 「ほらほら 食べログの評価高いし美味しそう!」 「うわっ!予算高!!たっか!!無理無理!」 結局大学近くにあるちょっと高いけど旨いって食堂で食べた。 桐乃はぶちぶち文句いってたけどそれなりに満足だったみたい。 ----------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1107.html
692 名前:【SS】俺の桐乃がこんなに可愛い、のかもしれない[sage] 投稿日:2011/09/17(土) 00 09 57.23 ID 2+RPh6CJ0 [1/2] 『俺の桐乃はこんなに可愛い、のかもしれない』 おう、高坂京介だ。 なんだかここでは、みんな「桐乃は可愛い」と言ってくれているらしいが。 もしそれが本当なのだとしたら、俺は兄として、皆に感謝するよ。 いつもあいつを応援してくれて、ありがとう。 ……正直に話せば、若干、胸の中にモヤモヤした感情はあるものの、それでも、自分の妹が評価されているのは、素直に嬉しく思う。 最近になって気付いた事なんだが、どうやら俺は、少なからず桐乃を可愛いと思っているらしいんだ。 俺と桐乃の関係は全然進展していないし、今でもあいつはクソナマイキな態度しかとらない。 高圧的な態度も、ワガママを押し付けてくる所も、なんも変わっちゃいない。 でも、とある一件から、少しだけ変わった事もある。 あいつが、桐乃が俺にぶつけてくれた本心。 「自分が一番じゃないとイヤ」 桐乃がそんな風に思っていたなんて、俺は知る由もなくて、ひたすら驚いたし、何より後悔した。 桐乃の内心も知らないで、浮かれていた自分に腹が立った。 だから俺は、もう迷わずに桐乃を正面から受け止めようと、そう決心した。 すると、どうだ。今までの傍若無人な態度も、捻くれた意地の悪さも、 俺を「兄貴」ではなく、「京介」と呼ぶことも。 不思議と嫌な気がしなくなってきちまった。 それどころか、どうやら嬉しくも感じられてしまう。 周りからはシスコン、シスコンと言われる有り様さ。俺は少しばかり、考えを改めただけだってのによ。 まったく、難儀な話だぜ。 さて、こうなったからには俺も開き直り、何処ぞの妹バカな親友を見習って、ウチの妹・桐乃がどれだけ可愛いかを、少しだけ話してみた いと思う。 ……実際にシスコンを公言するとなると、やはり変な気分だな。 まぁ、いまだに不本意ではあるものの、桐乃の可愛さをより多くのみんなに知ってもらうために、話を進めていこう。 とは言ったものの、既に俺と桐乃の関係や、二人の間にあった出来事は、皆が知っている通りだ。それを掘り起こしても面白くない。 それならば、という事で、今回は 「こんな桐乃は可愛いのか?」 という、普段の桐乃と違った「if」の桐乃を想像してみようと思う。 見てくれでは既に世界一可愛いと言える桐乃の事だから、どんなパターンにせよ、きっと可愛くなってしまうんだろうな。 それでも、俺の妹の可愛さを知りたいと思う奴は、是非聞いていってくれ。 まず、『甘えん坊な桐乃』だ。 俺の妹萌えの師である桐乃自身が、一番ストライクなのがここだろう。自分にそんな妹が現れたら、きっと 「やばやばやばっ!マジヤバいって!!お姉ちゃんを萌え殺すつもり?フヒヒ」 とか言って、暴れまくるだろうよ。 では、俺にとってはどうなのだろう。 「京介お兄ちゃん♪今夜、桐乃も一緒に寝てい~い?」 ……や、やるじゃねぇか……。ベタな妹ゲーをやっている時はそうでもなかったが、実際に自分を投影すると、とんでもない破壊力である 。 桐乃が我を忘れて夢中になるのが、ちょっと分かった気がするぜ。ハァハァ。 でも、なんだろう。この違和感は。 すごく可愛いのだけれど、実際の桐乃とかけ離れすぎていて、可愛さ以上の感情を抱けない気がする。 兄の立場からすれば、これ以上ない理想の妹像であるはずなのに。 まぁいい。次にいく事にしよう。 次は、『ちょっとエッチな桐乃』だ。 自分で何言っているのかよく分からない設定だが、桐乃のスタイルの良さを踏まえると避けては通れない道である。 開け!俺のシスコニック・リヴァイアサン!!(カッ!!!) 「えいっ!」 (ぽよん♪) 「なっ!?いきなりどうしたんだ、桐乃!?」 「べっつにぃ~。ちょっとしたスキンシップだって」 「……あ、あの、当たってるんですけど……」 「当ててんのよ」 おほっ♪ コレはありなんじゃねぇ?むしろ、大歓迎じゃね!? 前々から桐乃の柔らかさには定評があったが、このスキンシップと称した妹アタックは、世界中のお兄ちゃんを虜にすること間違いなしだ ! いい。これはいい。 ……いいのだが、この妄想をこれ以上続けると、何処からか恐ろしいほどの殺気を感じてしまいそうなので、自重することにしよう。 よし、最後は『物静かな桐乃』だ。 これはあまりにリアルとかけ離れている気がするので、想像も難しい。 だが、いつも桐乃と相対する俺に不可能はない! 「…………兄さん」 「ん?どした、桐乃?」 「……この雑誌、一緒に読まない?」 「俺と?」 「…………(コクリ)」 「別にいいぜ。ほら、隣こいよ」 「うん」 トテテッ、ススス、……ピトッ♪ 「ちょ!くっつき過ぎじゃないか!?」 「(フルフルッ)……こうしないと、二人、読めないもん」 「そ、そうか……」 これは、眼鏡だよな。桐乃、絶対眼鏡かけてるよなっ! 垢抜けた本来の桐乃と、まるで正反対にいる桐乃だ。 物静かな文学少女の風貌で、小動物のように寄り添ってくる妹。 そして、眼鏡。 これは無視できない魅力を兼ね備えている! ……のだが、このタイプの桐乃だと、妹にハァハァしているイメージが湧かないんだよな。それどころか、美男子同志を絡ませt……ハッ !! い、いかん!知り合いの腐った妹を連想してしまった!!ダメだ、ダメだっ!!! 兄として、妹がどんな趣味を持とうが許容できる。しかし、あの強烈なBL好きが二人に、だと……?想像しただけで恐ろしいじゃないか。 やはり、この桐乃は却下だ。 うぅむ。 いくつかの「if」桐乃を想像してみたものの、どこか違うんだよな。 もし桐乃が、優しくて、俺に甘えてくれて、誰もが羨むような健気な妹になっても。 それがあいつの本心からそうならない限り、きっと俺は喜べない。 それだったら、クソナマイキで、危なっかしくて、それでいてたまに可愛げを見せる今の桐乃が、一番可愛いと思える。 前はこんな風に考えなかったのにな。不思議な話だ。 とにかく、俺は本来の桐乃が一番好きらしい。 自分でも恥ずかしいほどのシスコンぶりだが、本音なんだからしかたない。 もうあいつを悩ませないためにも、その事実を受け入れていこうと思う。 そうだな、まずは―― 次に桐乃に会ったら、「ほっぺにチュー」をおねだりしてみるよ。 きっと、「し、しないかんね!」って一蹴されるだろうけどさ。 それでも、それが俺達の「新たな一歩」だと思うから。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/817.html
819 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/06/16(木) 23 47 00.39 ID aR/Jr1S/0 今の京介は『妹ゲー』についてどのような感想を抱いてるのでしょうか・・・ そして、梅雨前線に乗っかって、電波が降ってきます。。。 『桐乃の大冒険』 ある日桐乃が 起きてくると 大好きな兄貴が 起きてきた 朝ごはんに パンが一杯余ってるだろ お願いパンを つかおうぜ ぱん つかおうぜ ぱんつかおうぜ ぱんつ かおうぜ しかし桐乃は 料理が苦手 麻奈実と比べても 負けてしまう 料理に 自信のない 桐乃ちゃん パンはいつも つきてしまう ぱん つきちゃった ぱんつきちゃった ぱんつ きちゃった やがて佳乃がやってきた なんでぜんぶつかうのと おおさわぎ しかたが ないから 作りなさいよ パンつくってと 佳乃さん ぱん つくって ぱんつくって ぱんつ くって それを聞いた 京介は 結果を予想して おののいた おまえ パン作った事 ないだろう? ほんとにパンを つくるんか ぱん つくんか ぱんつくんか ぱんつ くんか 御存じ 桐乃の大冒険 これから先はどうなるか またの機会をごひいきに それでは皆さんさようなら -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/119.html
277 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/03(月) 01 04 04 ID pgdBZwu00 [2/4] 高坂兄妹の帰還 KOUSAKA - BACK TO THE EARTH あたしとバカ兄貴は、60億キロの宇宙の旅を終え地球に帰還しようとしていた。 バカ兄貴の失敗の連続で大変だったけど、「こんなこともあろうかと」の裏技でなんとかしのいできた。 そんな苦労も今となっては兄貴との楽しい思い出。無限に広がる宇宙の中で、あたしたち2人は寄り添って任務をこなし、そしてわが家に帰ってきたのだ。 京介「地球か……何もかも皆懐かしい」 兄貴は、感極まって目に涙をためていた。確かに青い地球は感動的だけどね。 桐乃「何、黄昏ちゃっているの、笑えるんだけど」 京介「そんな事を言うなよ、やっと地球に帰って来れたんだ。正直いって地球に帰れるとは思わなかったがな」 桐乃「あんたが失敗ばっかりしていたからね」 京介「悪かったな」 桐乃「まあ、バカ兄貴にしてはよくやったよ。あとは地球に帰るだけじゃん」 京介「その前に、まだ最後の任務がある」 桐乃「あっ、そう。エロゲーが溜まっているから、ちゃっちゃっとやっちゃってよ」 京介「小惑星の地球衝突実験を行う」 桐乃「ふーん、で、どうやるの」 京介「俺を小惑星に見立てて地球に衝突する」 桐乃「はっ?あたしはあんたと心中なんかしたくないんですけど?」 京介「それは問題ない。桐乃、お前は地球に帰れる。衝突するのは俺だけだ」 兄貴は何かを悟ったように笑っていた。でも、そんなのに兄貴には似合わないよ。兄貴はそんなに諦めが良かったの? 桐乃「エエエエェェェエエエエ、ちょt今更何言っているの。何で一緒に帰れないの?」 京介「今の技術では、俺は地球には帰れないんだ。俺はお前と違って出来が悪いんだよ」 桐乃「あんたが帰らないんなら、あたしも帰らないっ!」 京介「駄目だ、お前の帰りを待っている人たちがいるんだ」 そう、地球には私たちの成果を待っている人たちがいる。それは分かっているけど…… 桐乃「じ、人生相談っ!」 京介「もう、時間がないんだ。桐乃、最後くらいお前の笑顔を見せてくれよ」 桐乃「嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、こんなの笑えるわけないじゃん」 あたしはいつのまにか泣いていた。あたしの涙は、無重量の影響であたしを取り囲むように浮かんでいた。 京介「時間だ、桐乃。お前の こと を」 桐乃「兄貴っ!」 京介「ア イ シ t …… 」 あたしは兄貴に突き落とされた、地球に向けて。 兄貴は笑っていた。写真の前で緊張しているような張り付いた笑顔だった。こんなことなら、モデルのあたしが笑い方を教えてあげればよかったのかな。 あたしも笑顔を作りたかったけど、涙が止まらなくて、うまく出来なかった。 兄貴は、あたしを最後まで見守って、バラバラに砕け、流星になった。 そして、あたしは地球に落ちた。 どすん、と落ちた。 279 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/03(月) 01 13 36 ID pgdBZwu00 [3/4] 俺はいつものように俺の部屋の俺のベッドで眠っていた。 しかし、どういう訳か体が重いし、女の泣き声が聞こえる気がする。 寝ぼけマナコで俺の胸の方を見てみると、 そこには、俺にしがみ付いて号泣している桐乃の姿があった。 「シンジャイヤ、シンジャイヤ」 何をいっているんだ、この妹は? 「おい、おい、桐乃、落ち着け?どうしたんだ」 「あ、あんた、生きているのね」 「ああ、俺は生きているぞ」 「よかったぁ、えへへ」 今度は、笑いながら号泣する桐乃。やっぱり意味わかんねーよ。 やっと泣き止んで落ち着いた桐乃から事情を聞いた。 どうやら桐乃は、今日みた小惑星探査機「はやぶさ」の動画に、 俺たち兄妹を重ね合わせた「夢」を見たようだった。 で、桐乃が言うには、 俺がはやぶさ本体で、桐乃が帰還カプセルで、 燃え尽きた俺を見送って、宇宙から自分の部屋の床に「着陸」して、 あわてて俺の安否を確認しに来たらしい。 そう言われてみれば、さっき、桐乃の部屋の方から、 どすん と、ベッドから落ちたような音が聞こえた気がするけど。 先日、桐乃を誘って「SPACE BATTLESHIP○マト」を京成○ーザまで見に行っただが あまりの出来の悪さに桐乃の機嫌が直らなかった。 そこで、沙織に相談したところ「HAYABUSA-BACK TO THE EARTH」を薦められたんだ。 2人でネットの動画サイトで「HAYABUSA BACK TO THE EARTH」で検索して、 かたっぱしから見たけど、ツボにはまったのか、桐乃は泣きじゃくっていたな。 「じ、人生相談があるの」 「いいぞ、いってみろ」 「1月4日から千葉市科学館でHAYABUSAのディレクターズカット版の上映が始まるの。 一緒に付き合って」 「わかった。俺たちには時間ならたっぷりあるからな」 おわり 305 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/01/03(月) 03 43 53 ID pgdBZwu00 [4/4] 277 279の元ネタ 探査機はやぶさにおける、日本技術者の変態力1/2 ttp //www.youtube.com/watch?v=OUSDlQAAZGY 探査機はやぶさにおける、日本技術者の変態力2/2 ttp //www.youtube.com/watch?v=8InGzdSFf-M NR=1 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1047.html
476 名前:【SS】桐乃と花火の記憶[sage] 投稿日:2011/08/24(水) 10 15 59.82 ID OhAB/Nxi0 『桐乃と花火の記憶』 《今夜、デートしようぜっ!!》 俺は唐突に、桐乃宛にメールを送った。どこからどう見ても、妹に送るメールの文面ではない内容で。 (メールメルメルメルメルメルメ~♪) 送信から間もなく、携帯の着信音が鳴り響く。メール受信ボックスを開くと、桐乃からの返信が届いていた。 「返信、速すぎだろ……」 これが現役女子中学生の性能なのか。俺は若い世代の実力に畏怖しつつ、液晶に表示された文面を見る。 《ウザ。アンタ、誰と間違えて送ったの?怒んないから言ってみて》 そこには、鬼嫁による浮気する旦那への問いかけのような内容が映し出されていた。 俺はやましい事などしていない。しかし、妙な圧力に気圧されそうなのは気のせいだろうか? 《間違ってねぇよ。お前に送ったんだ》 俺は正直にそう返した。一瞬、敬語で返してしまいそうになったが、それでは兄としての威厳が皆無なので、淡々と答えてみた。元々、威厳があったかは怪しいけどな。 《ソンナーヤサシクシナイデー♪》 すると今度は、別の着信音が響き渡る。これはメールではなく、電話の着信音だ。 液晶には『桐乃』と表示されている。 「(ピッ)よう!」 『よう!じゃないわよっ!アンタ、さっきのメール、何っ!?』 通話口を飛び越えて、桐乃の怒りの言葉が、俺の耳を責め立ててくる。 「何って、今夜一緒に出かけようと思って、メールしただけだぞ?」 『だ、だからって……デ、デートとか言うなっ!!』 「別にいいだろ?」 「良いわけないでしょ!?このシスコンッ!!」 うぅ~む、俺はちょっとでもフレンドリーにと思ってそう書いたんだが、桐乃にとってはお気に召さなかったようである。キモいだの、変態だの、罵声がいくつも届いてくる。 「わ、悪かったよ!まさかそんなに怒るとは思わなくて……」 『……べ、別に怒ってはいないけど……』 ウソつけ、めちゃくちゃ怒ってただろうが!あれで不機嫌じゃなかったら、機嫌の良い時は天使になっちゃうだろ!? 「あ~、まぁいい。とにかく、今夜時間空けられるか?」 『えっ?あぁ、さっき練習終わったから、別に大丈夫だけど……』 「そっか。じゃあ家に帰ってきてから、一緒に出ようぜ」 『……いいけど。で?アンタ何処に連れて行く気なワケ?』 ひとまず誘いにはOKしてくれたものの、当然のように行先を聞いてくる桐乃。まぁ、当然の反応だろう。 「それなんだが、今夜、花火大会があるだろ?」 『あの、隣町のやつ?』 「そうそう。それに行こうと思ったんだよ」 『……ふーん』 具体的に場所なんか言わなくても、この辺は兄妹での意思疎通が容易いところだ。 俺達が小さい頃からやっている、隣町の花火大会。 この近所では、夏の恒例とされているイベントだ。 小さい頃は家族みんなで行った事もあった気がする。詳しくは思い出せないが、桐乃が一発で言い当ててくれたおかげで、説明せずに済んだ。 『分かった。いいよ』 思案したのか、少しの間があって桐乃から了承の言葉が返ってくる。 「よし、じゃあ家で待ってるわ。気を付けて帰ってこいよ」 『うん。……ねぇ、アンタさ』 「ん?どうした?」 『まだ……覚えてたの?』 不意に、桐乃から何かを確認するような問いかけがあった。 「え?一体、何の事だ?」 『……別に。じゃ、後で』 『(プツッ。ツー、ツー、ツー)』 「なんだ、いきなり切りやがって……」 桐乃は俺の聞き返しには答えず、すぐに通話を切ってしまった。まったく、相変わらず自分勝手な妹だぜ。 ……それにしても、さっきの問いかけ。何か意味があったのだろうか? 俺は心当たりがないのでそのまま答えてしまったが、それはアイツの望んだ答えとは違っていたようだ。 覚えてる、か――。 当てはまる記憶を探そうとはしてみたが、生憎俺の頭じゃスマートな解答は出せずにいた。 そのまま時間だけが過ぎていって、不機嫌な表情の桐乃と合流をし、何とも言えない居心地の悪さのまま、俺達は花火大会へと向かうのだった。 「おー!出店とか、結構出てんのな!」 「……」 「おっ、アレ型抜きじゃん!?まだあるんだなぁ!!」 「うっさいなー。子供じゃないんだから、そんなにテンション上げないでよ」 一緒にいるこっちが恥ずかしい。そう言わんばかりに、桐乃は俺をジトーっと見つめてくる。不機嫌さ丸出しである。 「ひ、久し振りなんだし、別にいいだろ!」 「単純バカ」 「うるせーよ!」 普段からトゲしかないような発言ばかりの桐乃だが、今日はいつもにも増して手厳しい。こうやって一緒に来てくれているだけ、最低の気分ではないらしいが、それでもご機嫌ナナメである事には変わりない。 なんとか機嫌を良くしなければ。さて、どうしたものか。 そう考えている俺の視線の先には、お面がいくつも並ぶ、子供向けの出店があった。そしてそこに、今の俺にとって天の救いのようなアイテムが用意されていた! 「おい、桐乃!アレ、メルルのお面じゃね?」 「メルちゃんキター!!」 俺の声を遮らんばかりに、桐乃は勢いよくその出店へと向かっていった。 「すみません!コレとコレッ!!表情違いで一つずつください!……ほら、そんな所にいないで、早くお金払ってよ」 「お前の方がテンション上がってんだろっ!!」 なんで当然のように俺が支払う事になってるのか。そんな疑問は置いておいて、とりあえずは桐乃の機嫌は一気に回復したようである。恐るべし、メルルパワー。 「えへへー。メルちゃんマジ天使ー」 「プッ」 さっきまでむくれていたのに、今じゃしまらない顔してさ。コロコロ表情が変わるヤツだけど、やっぱり笑ってる桐乃が一番だよな。 「何ニヤついてんの?」 「いーや、別に」 「ふん!……キモ」 相変わらず、一言多いけどな。 「そういえばさ……」 「ん?」 花火が見えるスポットへと、二人並んで夜道を歩く。 そんな中、桐乃が俺に話しかけてきた。 「どうして急に、花火大会になんて誘ったの?」 「……あー」 「だれか誘うにしても、他に選択肢はあったでしょ?地味子とか、黒いのとか……。なんで、アタシなの……?」 桐乃は俺に目を向けずに聞いてくる。その表情は暗くて窺い知れなかったが、声のトーンを聞く限りでは、曖昧に答えてはいけない気がした。 「そうだなぁ」 そもそも、花火大会に行こうと思ったのは、他愛もないきっかけだった。家への帰り道に、道端に貼られたポスターに目がいき、久し振りに行ってみたいなと、単純に思ったからだ。 デート、なんて茶化した言葉を出すには、あまりにもくだらない理由だったと思う。 それでも、桐乃を誘ってここに来たのは―― 「一緒に見たいと思ったんだよ。お前と」 「えっ?」 「ここに来ようと思った時、最初に浮かんだのが、お前と一緒に花火を見てる光景だった。ただ、それだけだ」 「……」 理由を伝えようとしても、それ以上の説明が出来なかった。 言葉通り、桐乃と行きたい、それだけを思って誘い出しただけだから。 「……ふーん。あっそ」 バカじゃん。 小さくそう呟く桐乃は、表情を悟らせまいとあさっての方へ視線を送っている。 俺の誘い文句が、コイツの意に沿ったのかは分からないが、この様子じゃそれほど不愉快ではないらしい。つい最近、見抜けるようになった事だけどな。 定速に進む、二人の足音。 まばらに続く人の波は、皆同じ方向へと流れていく。 この景色を眺めていると、俺は無意識に記憶の奥に閉まってあった出来事を思い出していった。 そう、あれはもう十年近く前の事だろうか? いつかの夏休みに、俺と桐乃は両親に手を引かれ、花火大火に訪れた。 子供の頃に見上げた花火は、ただただ大きくて、夜空に咲く色鮮やかな花を、食い入るように見つめていた。 時間を忘れ、一つ、また一つと打ち上がる花火に夢中になっていたのだ。 一方の桐乃はというと、幼いから仕方無いだろう、花火の轟音にも関わらず親父の背中で眠りこけていた。 やがて花火も打ち終わり、家に向けて歩いている途中に、桐乃は目を覚ました。 「ウワアァァン!!ヤダ、ヤダ!アタシも花火みる―っ!!」 自分が寝ている間に花火大会が終わってしまった事を知ると、桐乃は泣きながら親父の背中で暴れた。 「うっ、すまん桐乃!泣くな……」 「ほーら。また来年もやるんだから、泣かないの」 親父とお袋は、困惑しながらも桐乃をあやす。しかし桐乃は、「見たい!見たい!」と駄々をこねるばかりであった。 桐乃はなかなか泣き止まない。その様子に困り果てた両親だったが、当時の俺は大きい声で桐乃に向かってこう告げた。 「またオレが連れてってやるよ!!」 「……ふぇ?」 「またいつか、オレが桐乃を連れてきてやる!その時は、いっしょに見ような!」 「……グスッ」 「だから、泣くな桐乃。なっ?」 「……(ゴシゴシ)……うんっ!!」 俺がそう言ってやると、桐乃はニッコリと笑ったっけ。 親父もお袋も、「京介にはかなわないなぁ」なんて言って、安堵して俺達を見ていた。 それから桐乃は、親父の背中から降り、嬉しそうに俺と手を繋いできた。 「やくそくだからね、きょうちゃん!!」 「おぅ!」 「えへへ」 それまでの泣き顔などどこ吹く風で、桐乃は嬉しそうに笑っていた。 そんな仲の良い兄妹の姿が、俺の脳裏に映し出されていく――。 あぁ。 俺はなんという馬鹿野郎だ。 俺と桐乃にだって、こういう時代があったんだ。 それを今まで忘れていて、思い出す事もなく日々を過ごしてきた。 その後の花火大会も、結局一緒に行く事は叶わなかった。 そこから何度かの夏は、行こうと思っても都合がつかずに行けず、そしてある時を境に、俺達はその約束さえ無かったものにしてしまい……今に至る。 いや、正しくは、「俺が約束を忘れた」のだろう。 多分、今日の電話越しに桐乃が聞いた「覚えてる」というのは、この約束の事だと思う。 そうすれば、忘れていたのは俺だけで、桐乃はずっと、連れていかれる事を願っていたのかもしれない。 そう気付かされた瞬間、俺は自分の愚かさを激しく悔やんだ。 コイツは俺を嫌いなはずなのに。 それでも、忘れないでいてくれた。 顔を合わそうとしなくても、口をきかなくても。 幼い頃のささいな約束を、ずっと覚えてくれていたのか……。 その事実を知ると、一気に目頭が熱くなり、自然と涙を零してしまった。 (ヤベッ!!) 俺は急いで涙を拭う。今は桐乃と一緒だ。昔の記憶を思い起こして泣いている場合ではない。 桐乃に、気付かれただろうか?俺は慌てて桐乃を見やるが、桐乃は別の方へ目を向けていた。助かった。 それにしても、今回の件は俺に落ち度がある。 小さい頃とはいえ、桐乃を騙していた事になるのだから。 ……謝ろう。時間は遅れたけど、それで少しでも桐乃の積年の思いが救われるのならば。 大袈裟かもしれないけれど、俺にはそんな風に思えていたんだ。 「なぁ、桐乃」 「何?」 「さっきの……電話で話した事だけど。……今、思い出したわ」 「……それで」 続けて。桐乃はそう促してくる 「ごめんな。連れてこれなかっただけじゃなく、忘れちまってさ」 「…………」 「ホント、ごめんな」 「……いいよ、もう。気にしてないから」 桐乃はそう言ってくれた。本当に気にしてないわけではないだろう。けれど、思い出してくれたから、いい。そう、思ってくれているのか? 「それにさ、連れてきてくれたじゃん。今日、こうして、約束通りに、さ」 「桐乃……」 「確かに、忘れてるって気付いてムカついたけど……でも、さっきアンタ……京介がアタシと見に行きたい、って言ってくれて、……ちょっと嬉しかったから」 暗い中、わずかに桐乃の頬が紅潮していくのが見てとれた。 それでも桐乃は、俺を見つめながら、少しだけ照れくさそうに 「それでチャラにしてあげる!」 そう、笑ってみせる。 それを見て、俺は思わず胸を高鳴らせてしまった。 (ぐっ!!妹なのに……) 天使かと思ったぜ。悔しいが、本心からな。 そんな甘い雰囲気を兄妹で醸し出していると、 (ドーンッ!) 大きな音を響かせて、大輪の花火が俺達の頭上に花を咲かせた。 「おーっ!」 「ワーッ、綺麗ー!!」 お互いに照れくさい空気を作っていただけに、タイミング良く打ち上げられた花火に二人共に視線を移す。 ドン! パラパラパラ……。 絶えず彩り豊かな花火が続く。周りの人達もその場で足を止め、喝采交じりに夜空を見上げている。 「ここだと大きく見えるねー!」 「あぁ、そうだな……」 桐乃も無邪気に花火を眺めている。その姿は、いつか花火を見れずに泣いていたあの頃の桐乃と、重なって見えた。 (良かったな、桐乃――) 数年遅れで叶えられた約束を、声には出さずに喜んだ。 今も昔も、桐乃のこの表情が、俺には何より嬉しいらしい。 そんなシスコン全開の思考のままに、俺も空に描かれる花火を見上げていた――。 「本当の事を言うとね」 花火大会も終わり、家に向かって歩いている途中で、桐乃は俺に言ってきた。 「昔、花火を見れなくて泣いた時さ、別な理由があったんだよね」 「別の理由?」 「そっ」 「寝ちゃってたのが悔しいとばかり思ったぜ」 「勿論それもあるけど……」 桐乃はチラッ、チラッ、と俺を横目で窺いながら、何かを切り出そうとしている。 「あの時、ア、アンタがあまりに嬉しそうに花火の事を話すから、なんだか悔しくなっちゃって……」 「えっ?俺、そんなに楽しそうだった?」 「そうよ!すげー、すげー!って何度も繰り返してさぁ」 「へ、へぇ……」 「アタシは見てないのにー!って思って、だんだん寂しくなっちゃって」 ……桐乃さん、それは君が正しい。今更だけど、マジでゴメンね。 「思わず、泣いちゃったってわけ」 「それは悪いことしたなぁ……ゴメンな」 「それはさっき許したでしょ?もういいって」 「サンキュ。……でも、それでよく泣き止んだよな」 「え?」 「いや、いくら俺が今度連れてくって言ったにせよ、そう簡単には納得しなさそうだけどなぁ」 「それは!アンタが言ってくれたから……」 桐乃は勢いよく何かを言おうとしたが、急に言葉を詰まらせ言い淀んだ。 「えっ?俺が?何?」 「え、えっと……えっと……」 キョトンと聞き返す俺、対して桐乃は、視線を泳がせながら慌てているように見える。 そして、 「……な、何でもないっ!!」 と、急にムスッと黙り込んでしまった。 「何だよ~、そこまで言ったら言えよなー?」 「うっさい。バカ!さっきまで忘れてたのに、エラソーにすんな!」 「うぐ……結局、いつも通りかよ」 さっきの健気さは何処に消えたのか……。目の前じゃ桐乃はフンッ!と頬を膨らませて、高圧的な姿勢でそっぽ向いている。 まぁ、なんだ。 たとえ昔の記憶を思い出しても、収まる所に収まる、というか。 俺も桐乃も、こういう関係が今の俺達なんだろうよ。 そう思うと、妙に落ち着いちまってさ。 「俺の妹が、可愛いわけがないもんな」 「……何か言った?」 「いや、なにも」 そんな悪態だって、不意に零れてしまうわけだ。 「まぁ、今回は許してあげたけど――」 ただ、少し変わった事があるとすれば、 「これからは、もう約束破らないでよね!!」 そう言って、桐乃が俺の手を取り、自分の手を重ねてきた事ぐらいか。 「それは、また連れてこいって事か?」 「当たり前じゃん?」 「へーへー。分かったよ」 「絶対だからね、京介!!」 ったく、見惚れるくらい良い笑顔しやがって。 そんなの反則だろ?何も言えねぇよ。 いつかの夜と同じ、手を繋いで歩く帰り道。 また来年の夏も、その先も、俺が桐乃の傍にいるのが確定したわけだ。 ただ、今度はもう忘れねぇよ。絶対に、な。 俺は不意に絡まった二人の小指に、そう誓った――。 ----------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/615.html
530 名前:【SS】5巻 4章 桐乃視点 1/2[sage] 投稿日:2011/04/25(月) 00 00 00.99 ID 1ZTDl1ZsP [6/6] なんでこんなもん書いてるんだろうと思いつつ、書き上げてしまったので投下しますよ 読んでも後悔しても……知らないんだからね! 「家で休め、か。あたし、どうすればいいんだろ……」 コーチから追い出されるように練習場から寮へと帰ってきたあたしは、そうつぶやいた。 あたしがスポーツ留学としてアメリカに渡米してから数ヶ月がたつ。 あたしは日本を出る際に自分に一つの枷を掛けた。 こっちでタイムで1勝するまではみんなには連絡しない。そういう縛りを。 その縛りがあたしに力をくれると思って。でも、あたしはまだ一度として勝つことが出来ないでいる。 何で勝てないんだろう。あたしはここまで自分を縛って、それを糧に歯を食いしばっているのに。 1勝。ただ1勝さえすれば、自分にかけた枷を外してあやせや黒猫達と連絡を取れるのに。 あたしはまだ甘いんだろうか? まだあたしには捨てなければいけないものがあるんだろうか。 もしこんな時にあいつがいたら……そう思ったときに気付いた。 ――きっとこれが、あたしの最後の甘さだ。 あたしがどうしようもなくなった時、動くことができなくなった時、そんなときは何故かあいつが助けてくれた。 今、ここにはあいつはいない。でもあたしはどこかであいつに甘えていたのかもしれない。 ――あいつに甘えるなんて、ゾッとしないけど。 だとすれば、あたしはあいつとの関係を切らなくちゃいけない。 そう。それこそ、会話すらまともにしていなかったあの時の関係に戻るように。 そうすれば、きっとそうすればあたしはもっと自分を追い込めるはずだ。 そこまで考えて、胸がズキリと痛んだ。 なんだろう、この痛みは。今更あいつとの関係が冷めようと、どうということもないはずなのに。 それに、あいつがあたしのことをどうとも思ってるはずがないのだから。 あいつに無茶な我侭を言って、あげく、黙って一人であの家を出たあたしなんかのことを。 ズキンズキンと胸が痛む。くそ、治まれ。治まってよ……! 痛む胸を無視するようにあたしは考える。今、あたしとあいつを繋いでるものはなんだろうと。 ――考えるまでもない。それはすぐに思いあたった。 それはあたしがあいつと共有した秘密。あたしが最初にあいつにした人生相談。 きっと馬鹿なあいつは今も律儀にあのコレクションを護っているんだろう。あたしの言った通りに。 そうだ。今あたしとあいつを繋いでるものはただのそれだけだ。それ以外の繋がりなんて……きっと、ない。 だったら、話は簡単だ。それを……捨てさせればいい。 そうすれば、あいつとあたしは共有するものも、何もなくなる。 ズキリ 確かにあのコレクションはあたしにとってかけがえのないものだ。でもそれは結局物でしかない。 それは、たとえ今なくなったとしても後で取り戻すことは出来る。今少しだけ我慢すればいいだけなんだから。 それだけで今の状況を打開できるなら――どうってこと、ない。 531 名前:【SS】5巻 4章 桐乃視点 2/2[sage] 投稿日:2011/04/25(月) 00 01 23.41 ID nBNuXGqJP [1/6] ズキリ 携帯を鞄から取り出した。 メールを開いて、受信履歴の中から目的の相手を探し出した。 『高坂京介』 ただ一度だけ、「連絡しろ」とだけ打たれたメール。それに返信する。 きっとこれが最後のメールになるんだろうな。 ズキンズキン 本文を開いて文字を打ち出していく。 打つメールの内容は……『アンタに預けたあたしのコレクション ぜんぶ 捨てて』こんなところだろうか。 本文を打ち終わり、後は送信ボタンを押すだけ。 そうすればあいつのことだ。そのまま言った通りに捨ててくれるだろう……あたしとのつながりと一緒に。 ズキズキズキズキ 大丈夫、大丈夫。こんな胸の痛みなんてすぐになくなってくれる。 さあ、送信のボタンを押せ。それだけで、全部終わるんだから。 ズキズキズキズキ…… 震える指を必死に動かして、あたしは最後のボタンを――――押した。 送信完了のメッセージ。それが携帯の画面に浮かび上がる。 本当に、なんて簡単で、あっさりしてることだろうか。 うん。これで、明日からあたしはもっと頑張れる。頑張れるはずだ。頑張れる、はずなのに…… なんで目の前の光景は、こんなに滲んでいるんだろう。 頬を伝って、座っていたひざに雫が落ちる。 ポタポタポタポタととどまることを知らないかのように次々と落ちていく――涙。 あたしは膝を抱え込むようにうずくまって顔を伏せた。 携帯が何度も何度もなっているのには気付いていたけど、それには出る気にはならなかった。 胸が痛い。涙が止まらない。今だけは誰にも会いたくなかった。誰の声も、聞きたくなかった。 ぐすぐすと止まらない嗚咽、涙、胸の痛み。 そうしたものに翻弄されているうちに、あたしはいつの間にか眠っていた。 ピンポーン いつの間にか聞きなれたインターフォンの音にあたしは目を覚ました。 あたし、いつの間に眠ってたんだろ。 外を見れば既に夕方になっていた。結構な時間を寝て過ごしてしまったみたいだ。 そういえばさっきインターフォンなってたっけ。まだリアも帰ってきてないみたいだし、あたしが出ないとダメだよね。 トテトテと玄関に向かうあたし。なのに何故か胸の鼓動が高まっていく。 なんだろうこれは。何かの予感だろうか。こんな時間の訪問者にあたしは何を感じてるというんだろう。 そんな自分の変化に戸惑いながらあたしは玄関のドアに手を掛ける。 そして、そのドアの先には――― 「よ、久しぶり」 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1599.html
26 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2012/11/21(水) 23 02 39.59 ID HSXN4NXF0 【きりりんの彼氏条件】 1.きりりんの父親(警察官、ヤクザ顔)に立ち向かい、殴られても平気 2.終電後、タクシーや車を使わずに東京から千葉に夜明け前に帰ることができる 3.他人の前でも「桐乃が誰よりも大事だ!」アピールができる 4.きりりんとエロゲーができる 5.どんな状況でも恥ずかしがらずきりりんのために行動できる 6.きりりんを誰よりも大事にできる ・・・あれ?京介以外に居なくね・・? ----------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/850.html
824 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/24(金) 10 32 46.70 ID XsuYx2ko0 [1/9] 783 いつのまにかお題が出てたので書いてみる。 恋風は知らん。 「まったく、この時間帯はいつも混んでるな」 秋葉原の帰り、俺たちはいつものように電車に揺られていた。 「・・・ねぇ、いつも思ってたんだけど、それって腕がきつくないの?」 満員電車の中桐乃が押しつぶされないよう、俺は桐乃を壁際に寄せ、両腕で人ごみから守っていた。 「辛くないわけじゃないけどよ、お前がつぶされるよりはいいだろ?」 俺の言葉に、桐乃は嫌そうに顔を背ける。 「・・・前から言いたかったんだけどさ、この格好ってあたしがあんたに壁に押し付けられてるみたいで、 好きじゃないんだよね」 「そうだったのか?」 確かに見ようによっては俺が桐乃を壁に押し付けているように見えるかもしれない。 「けどよ、誰かが見てるわけじゃねぇんだし、お前を守るためなんだから仕方ないだろ」 桐乃はチッと舌打ちする。 「あたしを守るために兄貴が身を呈してかばうとか、そういうのはもうイヤなの」 「桐乃が俺なんかにかばわれるのはイヤだってのは分かるけどよ、 俺は兄貴なんだから仕方ないだろう?」 桐乃はハァッとため息をつく。 あれ?俺なんか変なこと言った? 「とにかく、あたしはこうされるのがイヤなの。 ・・・・・・それにさ、あたしを守りたいならこれでいいじゃん?」 桐乃はそう言うと、俺の体に身を寄せてきた。 「ちょっ!お前なにやってんの!」 「しっ!声がでかい! ・・・だから、このまま兄貴が軽く抱きしめてくれれば、あたしはつぶされないですむし、兄貴だって疲れないでしょ?」 た、確かにそのほうが楽だけどよ・・・ 「さすがにそれはまずくねぇか?」 「兄貴はあたしを守りたいし、あたしは兄貴にかばわれるのイヤなんだからしょうがないでしょ? それに、兄妹なんだからこれくらい普通だって」 ・・・確かに妹を守るために軽く抱きしめるだけだし、これくらい普通だよな。 「仕方ねぇな。わかったよ」 俺は桐乃の背後に手を回すと、ゆっくりと優しく抱きしめた。 「・・・これで良いか?」 「・・・うん。 ・・・ちゃんと守ってよね、京介」 結局この後人が少なくなっても、目的地に着くまでずっと、俺はこうして桐乃を守り続けていた。 ・・・むぅ、これじゃただの仲が良い兄妹だな。 満員電車にまぎれていたあやせたんも見逃してくれるくらいの、 普通の兄妹のスキンシップだ。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/766.html
399 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 21 40 27.31 ID hz2PMNRj0 [4/4] 393 京介の制服着る桐乃がヤバ過ぎるw 400 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 21 42 05.31 ID Tzm6gpFx0 [5/8] 一瞬京介が桐乃の制服着てるのかと思った 疲れてるのかな… 401 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 21 46 25.83 ID cFGWfTr/0 [2/2] 400 ゆきあつさんリスペクトか・・・ 匂い嗅いだら我慢できなくなったんだな・・・ 402 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 21 47 05.57 ID a5abVHWh0 [3/8] 400 「おう、高坂。今日はコスプレでやるのか?」 403 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 21 47 53.79 ID UAsJsBGT0 [10/15] 夜の山を女子制服で駆け回る京介w 404 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 21 58 46.30 ID o5XU4o9o0 [1/3] あやせ「通報しました」 405 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 22 04 36.20 ID Tzm6gpFx0 [6/8] ああそうか 桐乃がアメリカ行った寂しさをそうやって紛らわしてたんだな 406 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 22 07 12.22 ID eMWnIyoOO [13/17] ゆきあつさんが大先輩すぎて危うく納得しかけたじゃねーかww 393 これは死人が出るぞマジで 407 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 22 07 35.65 ID SiP2axdM0 [2/4] あやせ「すねそって足つるつるにしてもごまかされませんよ?」 408 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/06/01(水) 22 09 01.04 ID UAsJsBGT0 [11/15] 京介「俺が桐乃に見えるか!?なあ!!桐乃がいなくなったのは俺のせいなんだ……!」(号泣) 浩平「おまえ…」 桐乃「京介はかっけーんすよ」 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1091.html
144 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/09/12(月) 19 58 23.05 ID BeBZrfgkP [3/12] みんな、こんばんわ。 みんなの人気者、桐乃の友達で表4人組の一人、ランちんことランだよ。 は? あたしのことを知らない? 表は3人組だろって? そんなこと言う人は原作2巻か6巻、もしくは漫画版俺妹2巻を読み直してこい! もしくは4コマ漫画にもでてるからそっちでもいいけどね。 最新情報としては9巻にもあたしの出番があるからそっちも要チェック! はいそこ、影が薄いとかアニメに出てこないとか余計なこといわない! あれよ。あたしが出ちゃうとあやせや加奈子を食っちゃうからしかたなくあたしの出番は削られたの! そういうことにしといて! わかった!? ――コホン。さて、自己紹介はこの辺にしとこっか。 話は変わるけど、実はあたし、もといあたし達は今修学旅行にきてるんだ。 え? 話が唐突過ぎる? そこは突っ込んだらダメ! 気にしたらそこで終了! ・・・ということで修学旅行にきてるの。 そんでもって今は夜。だから最初にこんばんわって言ったんだけどね。 そうそう聞いてよ。 修学旅行ってさ、普通ホテルとかに泊まるとか思うじゃん? あたしもそう思ってたんだけど、いざ蓋を開けてみれば泊まるのはちょっといい感じの民宿。 大き目の部屋に布団引いて雑魚寝するような場所だったわけなんだよねー。 ま、それはそれでねっころがりながら話するには申し分ないんだけど。 こういうのも気楽でいいよね。 ちなみに、今部屋にいるのはあたしと桐乃+2名だったりする。 勘違いしないでほしいけど、+2名ってのはあやせと加奈子じゃないから。 あやせと加奈子はどうしたって?そんなのほかの班になってもらったに決まってるじゃん。 最近あたしをのけ者してる罰よ罰。 いいじゃん、あたしだって桐乃と遊びたいし。 あやせとか加奈子いると桐乃そっちに構いっぱなしになるし。 あやせと加奈子だけで桐乃を占領するのはずるいよね。 何よ、ちょっと席が離れたからってあたしをハブにしちゃってさ。 だから班決めのときにソッコーで桐乃引き込んでやったんだよね。 桐乃ってば頼まれたら断れないタチだし、悪いと思ったけど利用させてもらったわ。 だけどさぁ、班が別々になった時のあやせの顔ったらもう怖いのなんのって。 目の光まできえちゃってさぁ。なんていうの? レイプ目っていうんだっけ? そんな感じで目をあわせられなかったわ。 あやせってアレが本性なわけ? あやせの意外な一面を見た気がしたよ・・・。 それはそうと・・・・・・ 「アイツ何やってんだろ・・・・・・ううん、確かにまだちょっと時間あるけど・・・・・・。 少しぐらい早くかけてくればいいのに・・・」 桐乃、さっきから部屋の隅で何かぶつぶつ言ってるけど何してんだろ? 「き・り・の! な~にしてんのぉ?」 「ひぁ!?」 ガバァ!っと擬音が聞こえそうなほどの勢いで桐乃に抱きついた。 ついでにムニュっと胸を鷲づかみ。んっふふ、こんなこと男子には出来ないもんね。 これぞ女の子の特権。羨ましいでしょ? 「ちょ、ランちん!? びっくりするじゃん!」 「あっはは、ごめんごめん!」 「んっ! こ、こらぁ! 謝りながら胸をもむなぁ!」 「いいじゃん減るもんでもないんだしさ。スキンシップだってスキンシップ」 「スキンシップって・・・・・・あんっ! も、もう~いい加減にしてよ!」 「・・・・・・・・・・・・」 「? ランちん?」 こ、これは・・・・・・まさか・・・・・・! 「桐乃・・・」 「な、何?」 「桐乃――――またおっぱい大きくなったでしょ!」 「ぶっ! な、何言い出すのあんたは!?」 「いーーーや! 間違いない! この前の身体測定の時より絶対に大きくなってる!」 「なんでランちんがあたしの胸のサイズしってるの!?」 「そんなことはどうでもいい!」 「いや、よくない! よくないから!!」 ちくしょー! 可愛さとかスタイルはまだ勝ちを譲ったとしても胸のサイズだけは負けてないと思ったのに! 今触った感触だとほとんどあたしと大差ないぐらいなんじゃないの? 「くっ、まさかあたしの唯一のとりえが侵される時が来るなんて・・・・・・!」 「い、いや、何もそこまで卑屈にならなくてもいいんじゃ・・・・・・ほら、ランちんだってモデルやってるわけだし」 「慰めはいらないわ! 桐乃、あんた・・・・・・・・・・・・カレシに揉まれて大きくなったか!!」 「んなわけあるかーーーーー!!」 大声であたしの言を否定する桐乃。 でもね桐乃・・・・・・ネタはあがってるんだよ? 「へぇ~? そんなこというんだぁ?」 「当たり前でしょ! あんまり言いがかりつけないでよ。あたし、カレシなんていないし」 「ほほう・・・・・・駅近の映画館」 「!」 「お気に入りのスイーツショップ」 「・・・・・・」 「あとはぁ・・・・・・某ゲームセンターのプリクラコーナー」 むっふっふ。あたしの情報網をなめちゃだめだよ桐乃? 桐乃が夏休みにしてたこと、こっちにもしっかり伝わってるんだから。 「ここら辺に何か心当たり、ない?」 「べ、別に? な、何も心当たりなんてないよ?」 目をこちらから逸らして、あからさまに動揺してるのがわかる。 もう、相変わらず隠し事が下手だなぁ桐乃ってば。 そんな態度じゃバレバレだよ? 「ふ~ん、まだとぼk「あーー!? パジャマがない!!」なに?」 ああもう、いいところだったのに。 何かあったの? 「どうしようAちゃん」 「えぇ? 昨日あんなに確認したのに?」 「うん。・・・・・・やっぱり朝心配になってもう一回全部出したのが悪かったのかな?」 「何、朝何かしてると思ったらそんなことしてたの? もしかして入れ忘れ? 忘れ物しないための確認して忘れるとか本末転倒じゃん」 「そうだよね~・・・」 っておやおや? あっちでなにやらお困りのようす。 しかたないなあ。ひとまず桐乃の追求は置いておこう。 あたしは桐乃を一旦放置して向こうの2人のほうへ向かった。 ちなみにこのお二人はさっきの+2名でっす。 双子の姉妹で、それぞれAちゃんBちゃん。愛称だケドね。 本名は詠と美衣って言うんだけど、誰かが「AB姉妹でよくない?」っていう一言でそのあだ名が定着しちゃったんだ。 あんまりなあだ名だとは思うんだけど、本人達が気に入っちゃって自分達でも使い始めたからそのまんまって感じ。 「どうしたのBちゃん」 「あ、ランちん。それがね、Bちゃんがパジャマ忘れちゃったらしくて」 「そうなの?」 「うん。困ったなぁ、ジャージとか持ってきてないし、私服で寝るしかないのかな。 しわになるのイヤなんだけどなぁ」 「あ~、そうだよね。でもパジャマに予備なんて持ってきてないしなぁ」 ここの民宿、温泉はあるのに浴衣がないんだよね。 浴衣があればこんな問題、なんてことなかったはずなに。 パジャマなんて予備なんて持ってきてないし・・・・・・やっぱり諦めてもらうしかないかな。 「何かあったの?」 「あ、高坂さん。ちょっとねー。わたしパジャマ忘れちゃったみたいでさぁ。 どうしよっかって話してたの。服なんて私服以外に持ってきてないしさ」 「ふーん、そうなんだ・・・・・・あ、あのさ」 「なに?」 「あたし、一応パジャマの予備あるけど、使う?」 「ホント!?」 マジ? 桐乃ってばどんだけ用意いいの? 普通パジャマなんて予備持ってこないっしょ。 「うん。たまたま、たまたま持ってきてただけなんだけどね? それでもよければ、だけど」 「いいよいいよ! ありがとう高坂さん!」 「わかった。じゃあ・・・・・・はい、これ」 「ありがと! ・・・・・・あれ? このパジャマ、もしかして普段から使ってるやつじゃない?」 「ギクリ」 んん? なんか桐乃の様子、おかしくない? 「え、と・・・・・・ダメ、だった?」 「う、ううん! ただ、予備でもよかったのにって思って。 わたしは予備のほうでもいいから今からでも変える?」 「だ、ダメ!」 「へ?」 「あ、いや、なんでもないよ」 「そ、そう?」 「うん」 な~んか怪しいな。何か隠してる? さっきとはまた別件で。 なんとなく桐乃が持ってきた荷物の中を覗き込んだ。 中にはさっきBちゃんに渡したものとは別のパジャマらしきものが見える。 紺色の、野暮ったいというか地味と言うか、そんな感じのやつだ。 可愛らしさのかけらもない。まるで男の人が着るようなやつみたい。 てかこれちょっと大きくない? それにこの襟元のボタン向きって・・・・・・ 「あ! ラ、ランちん何覗いてんの!?」 バッともの凄い勢いで荷物をひったくる桐乃。 まるで見られたらマズイものでも入ってるみたいに。 あ や し い あたしの直感が言ってる。桐乃は絶対に何か隠してる。 これは確かめる必要があるよね! さっきの続きもあるし! さっき見えたのも気になるし、ここは強硬手段に訴えてでも確かめさせてもらおうかな。 桐乃を挟んで向かい側のAB姉妹に向かって視線を送る。 一瞬のアイコンタクトの後、あたしはパチン! と指を鳴らした。 「A! B!」 「了解!」 「ういうい~」 「え? なに!? ちょっと何すんの!?」 「フッフッフ。桐乃、ちょ~っとおとなしくしててね~?」、 ガッチリとAB姉妹に後ろから拘束された桐乃はわけがわからないといった感じだ。 さてさて、さっき見かけたパジャマはっと・・・・・・ 「ちょ!? ランちんなんであたしの荷物あさってんの!? やめて! お願いだから! AちゃんBちゃんも離してよ!」 「まあまあ♪」 「よいではないですか♪」 「何が!?」 ぜぇんぜんきこえませ~~んってね。イヒヒ。 ん~と・・・・・・あった! 「みーつけた♪」 「ああ!? ダメ! それは・・・・・・!」 ブツをはっけーん! 取り出したブツをバッと広げると 「うわぁお。これ完全に男物だよね。何でこんなの持ってきてるの? なんでなんで?」 「そ、それは・・・・・・!」 「てかこれ絶対新品じゃないよね。でも桐乃のっていうのも・・・・・・」 キュピーーーン! はっは~ん、なるほど。閃いちゃった。 絶対にこれあれだよね。間違いない。 「わかった」 「な、なにが?」 「これが誰のかってこと。これさ・・・・・・カレシのでしょ?」 「な・・・・・・!? ち、違う!」 「顔真っ赤にしながら言っても説得力ないよ桐乃~?」 「ち、違うもん! さっきも言ったじゃん! あたしカレシなんていないし!」 「じゃあこれ、だれの?」 「そ、それは・・・」 「それは?」 ネエキミハ~キヅイテルカナ~♪ ああもう。何? 今いいところなのに。 音のしたほうを見てみれば桐乃の携帯が音をたてて震えていた。 「はっ!? や、ヤバ!」 「おおっと!? ダメだよ高坂さん。まだ動いちゃ~」 「そうだよ~。まだ終わってないんだから」 「で、でもホラ! 携帯鳴ってるし! でないとマズイじゃん。ね? だから離してほしいんだケド」 「ふーん」 時計を見た桐乃が急に暴れだすのを姉妹が抑えていた。 さすが陸上部、二人がかりでも結構大変そうだ。 だケドもうちょっと耐えてね二人とも。 ひょいと鳴ってる携帯を掴みあげる。 まだ鳴り止まないとは、かけてきてる相手結構辛抱強い。 ディスプレイに写る名前は――『京介』 うっそ!? 名前で登録されてる!? あの学校じゃ頑なに男子のことを名前で呼ばないような桐乃が名前!? これはこれはいよいよもって――――面白いことになってきたぁ!! 桐乃のほうに向かって顔を向けた。多分、あたし今スッゴイいい笑顔してると思う。 あたしの顔をみた桐乃は一気に顔を青ざめさせた。 「ま、まさか!? ちょっとまむ~む~!」 Bちゃんが桐乃の口を塞いだ。 こっちの頼みたいことをわかってくれるって楽だね。 BちゃんGJ! そ~れ、ポチっとな。 「は~い、もしもし?」 『・・・・・・桐乃? じゃないよな。お前誰だ?』 おお、口調が似てないとはいえ一発でわかるとは。これも愛の力ってやつ? 「こんばんは。あたし桐乃の友達のランっていいます」 『ラン? そういえば桐乃が何度かランちんって言ってるのを耳にしたような・・・』 「多分そのランちんであってますよ~」 ほうほう、仲がよくてケッコウケッコウ。 「えっと、お兄さんの名前は京介さんでいいですか?」 『何で俺の名前を――って携帯か』 「その通りでっす」 『そうか・・・・・・てか桐乃はどうした? 俺この時間に電話しろって言われたんだけど』 なるほど。 桐乃ってば、カレシからの電話をソワソワしながらまだかまだかと待ってたわけね。 口を塞がれた桐乃が真っ赤な顔をしてむ~む~言ってるけど気にしな~い。 「桐乃は今お風呂いってるんですよ。後でかけなおすようにいっときましょうか?」 『マジかよ。じゃあすまねえけど頼むわ。』 「わかりました~。・・・・・・ところでカレシさん。一つ聞きたいことがあるんですが」 『彼氏? 誰が?』 またまた~。とぼけちゃって。桐乃と一緒で京介さんも照れ屋なのかな? 追求しても時間の無駄だしさっさと話をすすめちゃえ。 くるっと体を反転させた。特に意味はないけど気分の問題。 「とぼけなくてもいいのに~」 『とぼけてるつもりはねえんだけど』 「はいはい。それでですね、聞きたいことっていうのは――カレシさん、パジャマ一着なくなってたりしません?」 『え? なんで知ってんの? 確かに今日一着パジャマがなくなってたけど』 証言ゲ~~~ット!! これで桐乃言い逃れできないよね。 スピーカーで通話垂れ流してるからあっちの二人にも聞こえてるはずだ。 っていうか、あたしの質問も結構きわどかった気がするんだけど。 だって、あたしの質問の前提って、桐乃が修学旅行前夜までカレシさんと一緒にいたってことだし。 うわぁ。桐乃ってば、浮かない話ばっかりだったと思ってたのにここまでカンケーが進んでたなんて・・・! それに、さっきもともと持ってきてたパジャマBちゃんに渡したってことは、カレシさんのパジャマ着るつもりだったってことだよね! ? うはっ! カレシのにおいに包まれて~なんてつもりだったのもしかして!? 桐乃、恐ろしい子! しかしさっきから後ろでバタンバタンうるさいな。桐乃が暴れてるのかな? 「ほうほう、なるほど。わかりました」 『聞きたいことってそれだけか? てかなんでそんなこと知って――』 「じゃあ後で桐乃にいっときますね~。それでわ~」 『おい! ちょっとま――』 ピッっと通話を終了した。 フヒヒ、これで証言もゲットしたし、桐乃もいい訳は―― なんて思いながら後ろを向くと 「ラ・ン・ち・ん?」 「き、桐乃!?」 ドアップの桐乃の顔があった。 ええ!? AとBは!? って思ったら桐乃の向こう側に見えた二人は目を回して倒れていた。 ちょ、二人とものしちゃったの!? 「さ~て、ランちん。何か言い残すこと、ある?」 「き、桐乃、落ち着こう? ね、お願いだから」 「ええ~? あたしは落ち着いてるよぉ? これ以上ないってぐらいに」 絶対にウソだよね!? 頭に青筋うかんでるじゃん! 「ご、ごめん桐乃! ちょっと魔が差しただけなの! だから許して!」 「フフフ、ランちん」 「な、何?」 「シネ」 「きゃああああぁぁぁ~~~~~~!!!!??」 それから、こってりとしぼられたあたし達は、桐乃からきつ~く今夜あったことは秘密にするように言われた。 特にあやせには絶対に言わないことっていわれた。 まあ、あの子ちょっと桐乃に関しては怖いところあるし、しかたないかな。 だけどさあ、桐乃も別に隠すことないのになぁ。 うう、正座なんてさせるから足しびれちゃったよぅ・・・・・・ さっき桐乃も携帯もって外いっちゃったし。何話してるんだろうね。 あんなに嬉しそうにしちゃってさ。もっと素直になればいいのに。 結局あたし達が言いふらさないのをいいことに意気揚々とカレシさんのパジャマきてたし。 鼻スンスンさせてさ。あそこまでふやけきった顔初めて見た。 どれだけカレシ好きなのよって。リア充爆発しろ! ・・・・・・まあいいや。あんなに幸せそうな桐乃、見れるのも珍しいしね。 さてと、そろそろ寝ようかな。 あっちの二人は桐乃のお説教でお風呂入った後ソッコーダウンしちゃったし。あたしもねよねよ。 それにしても・・・・・・あの電話のカレシさん、どっかで声聞いたことあるような気がしたんだけど・・・・・・誰だったかなぁ・・・・・・ -END- -------------